「関わる全ての人達の幸せを追求する」という理念を掲げ、16店のコンビニエンスストア・ファミリーマートのFC経営をするオオハシリテイリング。その代表取締役社長・山田有吾氏は、「コンビニエンスストアを経営することで、社員を終身雇用したい。社内キャリアプランを描き、成長機会を与え、いずれは家庭を持って家を買える。そんな社員を一人でも増やしたい」と語ります。
ネガティブな情報が多いようにも感じるコンビニ経営ですが、その実態はどうなのでしょうか。本稿では前回に引き続き、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、そんな山田有吾氏と対談を行いました。
店長を経営者に育てることがコンビニ経営成功のポイント
井上一生氏(以下、井上)――社員のことを真摯に考えて励んでおられる山田社長のお話を伺っていると、コンビニ経営を支援する私たちとしては、とても嬉しい気持ちになります。山田社長は、コンビニ経営成功の秘訣はどんなところにあると思いますか?
山田有吾氏(以下、山田)――やはり、人の育成がポイントだと思います。具体的には、店長を経営者に育てることです。また、他力本願ではうまくいきませんので、本部を批判するのではなく、本部が整えてくれている仕組みをどう活かすかを考えることだと思います。
人材育成の面では、店長の感情による人事評価ではない客観的な人事評価基準をつくり、しっかりと運用していくことが大切です。優秀な店長を育てることは、利益の出る店舗づくりに直結します。
また、QSC(クオリティ・サービス・クレンリネス※前編参照)の徹底が店舗運営のレベルを上げることは間違いありません。お客様をどうおもてなしするか、という基本に常に立ち返ることですね。
例えば私は、「大好きな人を家に招くとき、どうしますか?」と店長や社員のみなさんに質問します。まず部屋を掃除しますよね。大好きな人のために、いろいろとおもてなしを考えると思います。QSCは、それと同じことなのです。弊社では、独自にQSCチェックシートをつくり、人事評価制度にも組み入れました。ベースとなる指標を持つことは、やはり大切ですね。そして、いかに誇りを持って働いてもらうかだと思います。
本部との付き合い方という面では、元々本部にいたことが活かされていると思います。 QSCのコンテストでトップを取るなど、本部に名前を売ることも大切です。
例えば、既存店舗が辞めるとき、「あの経営者だったら、もっと日販(売上高)を上げてくれる」と思うところに本部は紹介します。そのときにパッと頭に自分の名前や社名を浮かべてもらえるようになれば、より好条件の店舗を引き継げるかもしれません。
本部もFC加盟店もWin-Winな関係をつくることですね。本部の言いなりになるということではなく、ビジネスとしてちゃんとやるということです。
コンビニ経営では、本部の仕組みを活かせる人が勝つと思います。「コンビニ経営は儲からない」という先入観があるかもしれませんが、何事もやり方次第です。
9ヶ月目仮決算対策で盤石なコンビニ経営を
井上――私たちSAKURA United Solutionの独自サービスに「9ヶ月目仮決算対策※」がありますが、4500店舗以上のお客様のうち約7割のお客様に、9ヶ月目に売上額や利益額をシミュレーションするためにこのサービスを導入していただいております(※9ヶ月目仮決算対策とは、決算まで3ヶ月を残す9ヶ月目に仮決算対策を行い、税金対策や納税の準備を行うSAKURA United Solutionの独自サービス。申告期限まで約5ヶ月あるため、各対策を講じやすいメリットがある)。率直に言って、9ヶ月目仮決算対策を行って経営はどう変化しましたか?
山田――もともと数字を見ることは好きなのですが、これは良いサービスだと思います。9ヶ月目仮決算対策が、SAKURAさんに税務などの経営支援をお願いしている理由のひとつであることは間違いありません。弊社では、10日と20日と月末に数値シミュレーションを出すのですが、それと9ヶ月目仮決算対策を組み合わせることで経営がよく見えるようになっています。
税金はいくらくらいなのか? 黒字着地か赤字着地か? 講じられる対策は? など、9ヶ月目仮決算対策があると具体的な行動につなげるための情報が揃いますし、いろいろなご提案もいただけるので助かっています。
ちょうど今、退職金制度をつくっているところなので、制度をどうしようか考えるうえでも役立っていますね。実は特別に、3ヶ月毎に仮決算をお願いしているんです。数字を見てその後の3ヶ月をどう戦うか判断しているので、目安が利くようになりますし、とても素晴らしいサービスだと感じています。
井上――ありがとうございます。嬉しいです。私には「全ての中小企業に9ヶ月目仮決算対策で対策を打つことを当たり前にしたい」という想いがあります。決算は年に1回では足りないのです。ぶっつけ本番の決算になってしまうわけですから。決算書は、会社の通信簿です。銀行・金融機関は、決算書を見て会社を評価するわけですから、9ヶ月目仮決算対策で銀行から評価される決算書にすることで、資金調達にも活かせると思います。
社会インフラとしてのコンビニエンスストア
井上――話は変りますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響はコンビニ経営にも出ていますよね。山田社長は、新型コロナをどう捉えていらっしゃいますか?
山田――私が社長になったのは2019年の10月のことですから、経営者1年目でコロナになるとは思いもよりませんでした。本当に眠れない日々が続きました。でも逆に、勉強できたことも多いと思います。
売上85%でどう利益を出すために現場で戦うかをみんなで考えました。いろいろと試してみて、7~9月はかなり数字も戻りました。社員やスタッフのみなさんのおかげですね。本当にありがたいです。問題は問題としてどう向き合って解決していくかが大切だと、このコロナで強く思いましたね。
コンビニの人材不足は数年前から顕著になってきていて、それを補填するために派遣を活用していたんです。ですが、派遣代がすごくかかった。派遣を利用すると、利益は出ません。今回のコロナでコンビニの人材不足が解消し、売上が85%でも利益が出るようになりました。それに、派遣の人には教育はできない。今日しか働かない人に、QSCの向上を伝えても……ということです。
コロナをきっかけに、独自QSCでお客様の信頼をどう得るかを再考しました。今後も戦いは続くのだと思いますが、終身雇用を実現したいという気持ちは変りませんし、気持ちが折れることもありません。実現のために、これからもがんばっていきたいと思います。
井上――心強いお言葉ですね。ぜひ終身雇用ができるコンビニ経営を実現していただきたいです。長く継続できる雇用を生み出すことは、とても尊いことだと思います。コンビニはすでに社会インフラになっていますが、雇用の面でも社会インフラですね。私たちSAKURAは、「コンビニという社会インフラを支えるインフラ」を目指しています。
東日本大震災の後、被災地に行ってタクシー運転手の方に1日案内してもらいました。その運転手さんが「震災の後の瓦礫の街の中に、コンビニに明かりがついたとき、生きる希望を感じた」とお話していました。コンビニが社会インフラであるという象徴的なエピソードだと思っています。
コロナで経済は大変な状況ですが、コンビニという社会インフラとして、私たちSAKURAは、そのインフラを支えるインフラとして、これからも伴走しますので宜しくお願い致します。